大学3年生のとき。
将来の夢も特になく、大学で中国語を学びながらなんとなく「中国語を使える仕事に就けたらいいかも…」とぼんやり思っていたときだった。けれど授業よりもアルバイトやライブハウスに行く時間のほうが格段に多く、昼夜逆転の毎日を過ごしていたわたしは少しだけ行き詰まっていたのかもしれない。当時つきあっていた彼氏ともうまくいかず、ふらりと立ち寄った近所のショッピングモールで、普段なら絶対に足を止めない「占い師コーナー」に立ち寄ってしまったのだ。
「あなた、お酒強いわね」
わたしの手相を見た占い師マダムの一言目はそれだった。
「この人、当たる」
何よりも説得力のある言葉だった。
一回1,000円の手相占い。たいした期待はしていなかったけれど「お酒強い」の一言でまんまと引き込まれてしまったわたしはその次の言葉を一生忘れないと思う。
「あなた、20代から、そうね、50代ぐらいまで海外を転々とするわ」
「転々と」
「そう、転々と」
その後、無事就職が決まり、海外会社への異動を目論んでいたものの部署の異動やら結婚やらで一時おあずけ状態に。仕事は好きだけど一生続けるのだろうか、と悩んでいたときに舞い込んできた夫の海外赴任。海外を希望していなかった夫に、舞い込んできた海外赴任。
「転々と、か…」
数年前の占い師マダムの言葉を思い出しながら、退職手続きをし、夫に帯同してやってきた香港。今のところ「転々と」はしていないけれど、さて、これから先どうなるか。ちなみにマダム、こうも言ってたなあ。
「結婚は26歳、子どもはふたりね」
今のところ、どんぴしゃ。
